シオン幼稚園 > 幼稚園の紹介

沿革

1966年 創立。「シオン幼児園」としてスタート。
1998年 千葉県知事の認可を受け、「シオン幼稚園」として公認。
以来、子供たちの「生きる力」を支えて参りました。

シオンようちえんのうた

1.たかいおやねの じゅうじかは 
しおんをてらす ひかりです

2.やさしいイエスさま まんなかに
 きょうもげんきに あそびます

3.あかるいおへや ひろいにわ  
 ここもかみさまの おうちです

園長からのごあいさつ

  ~園だより(しおん)2023年度春休み号~2022年度春休み号より~   
                     

<2023年度春休み号より>
 
























「はなたばにしてくださ~い」の声が事務所に響きました。久しぶりの言葉です。見ると白いぺんぺん草とお日様のような黄色いたんぽぽが握られていて、春がやって来たことがしっかり伝わってきました。それでも嬉しさばかりに浸れないのが幼稚園の春。この1ヶ月近く最後の〇〇、お別れ〇〇、と続いているからです。どれも心に沁みるような思いの残る活動でしたが、中でも思い出深いのは<お別れ遠足>です。

 4年ぶりにJRとモノレールを使っての遠足にしました。コロナ禍でしたから電車に乗るのは初めてという子もいます。幼稚園にとっても久しぶりですが、世間の方々にとっても、“幼児の集団での遠足姿”は珍しい光景となっているはずですから、どの様な反応を受けることになるのか緊張感で一杯でした。
 さあ、出発です。嬉しい高揚感一杯の子どもたちが公共の中でちゃんと過ごせるかと気を揉みながら、混雑の残る船橋駅改札口を通りました。駅員さんのいる特別ゲートに入った時です。「おはようございま~す」「電車、はじめてなの」「よろしくお願いしま~す」・・・いつもと変わらない、あの可愛い挨拶が続き、駅員さんたちの顔がほころびました。電車の中でも過ぎる景色に感動の声を挙げつつ、見知らぬ隣の人とお話を弾ませたりしながら千葉駅に到着。ちゃんと場所をわきまえて2列で歩く姿に、周りの方々は穏やかな視線を注いでくれました。モノレールでは【動物園前駅】に到着するのと同じタイミングで降りてきた運転士さんに「乗り心地よかった!」「モノレールかっこよかった」と声をかけ、運転士さんもほくほくの笑顔になりました。動物園の入口でも、動物たちにも、たくさんの声掛けは続きます。開園直後でまだシ~ンと静かだった動物園でしたが、子どもたちの声に、まずフクロテナガザルがウホ、ウホッと応えます。行く先ごとに「おしり可愛いね」「名前がすてき!」「なに、たべてるの?」と話しかけ、予定時間があっという間に過ぎ、最後は小走りに進む、そんな遠足でした。

一日を振り返った時に、心に浮かんだのは、子どもたちが行く所は、灯りが灯ったようにパッと明るくなっていったことです。駅も電車も動物園も、子どもたちは行く先々を、ポッ・ポッと明るくしていきました。『あ~、たしかに<光の子>だ』と確信です。明るさ・暖かさ・希望・平和を周りに伝える光の子です。

 イエス様は「わたしは世の光である」(ヨハネによる福音書8:12と言われました。イエス様の基に育ったのですからまさしく「光の子」です。きっとこの先の新しい世界でも輝き続けていってくれることでしょう。シオン幼稚園の全ての子どもたちとご家族の上に神様の祝福がありますよう祈ります。

                                                                     廣田 雅子

<2023年度3月号より>
 




















 黄色いクロッカスの花が咲き始めました。春の訪れを伝える嬉しい情景のはずなのですが「もう咲き出してしまった…」と切ない気持ちになるのは私だけではないでしょう。

過ぐる2月を振り返りますと、まず、こぶたの会のお母様たちの公演がありました。改訂版「ヘンゼルとグレーテル」のお話はもちろん、おみやげのスイーツやお菓子の家は子どもたちの心をぐっと掴むものでした。さすが、お母様たちのサークルだと実感します。また、4年ぶりのお餅つきは予想を超えるお父様たちの参加があって、お餅つきより遊びメインの形になりましたが、たくさんのお父様たちとの関わりに大喜びの一日でした。

 レゼのトーンチャイムの音色に包まれ、マナのクッキーの匂いが香り、ガルチンの草花に囲まれ、ルーチェの小物を身に付ける…幸せな幸せな環境です。(元気で明るい虹の会や軽スポのお母様たちに見守られていることも、もちろん!) 園の中におうちの方の姿の見える環境は、子どもたちにこの上ない安心感を与えるからです。自分の大好きな人たちが繋がっているのは心地よく、先生たちへの信頼の基になります。また、おうちの方にとっても毎日顔を合わせていることで、小さな不安や疑問を抱いた時に気負わずに訊くことができて安心感を大きくします。ご家庭と園の心の距離の近さは【バスなし】がもたらしてくれる恩恵です。

先日もあるお母様が「ちょっと話していいですか?」と近寄って来られました。元気一杯のKくんのお母様で、これまでも何度かご相談を受けていたので、今度は何か…と身構えましたがこの日の表情は全く違いました。そしてKくんとテレビを見ていた時のことをお話しくださいました。それはある病いとの闘いのドキュメント。番組が終わった後に「ババちゃんも、これと同じ病気で死んじゃったのよ。」と伝えたそうです。

「そうしたら、Kが“ぼくがおいのりしてあげるよ”と言って“しゅのいのり…”と祈りだし、『かみさま、ババちゃんがおかあさんのことをみまもってくれるようにしてください』と祈ってくれたんです」 涙を浮かべながら、そう伝えてくださいました。「普通の優しさを通り越した、(質の)違う優しさを育ててくださり・・・」とも。

 神様は子どもたちを招くと共に、そのご家庭も招かれていることを知らされる出来事でした。1年の終わりとなる3月、幼稚園の生活の中で神様の愛を伝えていくというシオン幼稚園の最も大切なミッションをしっかり果たしていきたいと、身が引き締まる思いでいます。 

                                                                     廣田 雅子



<2023年度2月号より>
 




















 ♪ 庭の木の枝、よく見ると 固い殻に囲まれた 小さな木の芽が見つかった。

        寒い寒い冬でも 負けるな負けるなと 守ってくださる神さま・・・ ♪

今、子どもたちが歌っている讃美歌です。落とす葉っぱすら無くなった園庭でも、目を凝らしてみると確かに木々には小さな芽が付いています。冬の情景を通して神様の愛を讃える歌ですが、情景だけでなく子育てや人生の様々な時が浮かんできて、その言葉を噛みしめしまいます。我が子とはいえ別人格ゆえにどう対応してよいか悩む日々はまさに子育ての「冬」のようです。そんな時に神様は言われるのです。不安に負けるな、焦りに負けるな、私が守っているからと。そして目を凝らせば“だいすき“と書かれた紙片れやとびっきりの笑顔といった「春の息吹」が見つかるはずです。ご家庭で子どもたちが口ずさむ讃美歌は大人へのエールかもしれません。どうぞ心を止め耳を傾けてください。きっと心持ちが違ってくることでしょう。 ところで実際のシオンの冬は…といえば、北風なんかどこ吹く風。”花いちもんめ“で名前を呼ばれずに泣く子がいれば「次は呼んであげよう」と相談したり、泥団子が壊れてがっかりしている子の傍らでそっと寄り添ったりと、たくさんのほっこり空気に包まれています。 

外にお出かけした時も、他園のお友だちに「こんにちは~!」と次々に声をかけ「わたしたち、チーボをさがしてるの」と伝えるその屈託のない心が嬉しくなりました。大事にされて育った心がこの先も続いていくといいなとの思いが募ります。そんな時に思いがけず、あるエピソードに出会いました。 

 小学校の1年生の授業参観に招かれた時のことです。授業は国語で「絵を見て文を作りましょう」という課題でした。絵は公園の風景で、そこにはベンチや猫・木・男の子・ボール…いろいろな物が描かれています。「ねこがベンチにいます。」「さかながおよいでます。」と、作った文が次々と発表され、卒園生のH君の番になりました。  「木が生きてます。」

木が生きてます・・・その文が胸にズシリと響きました。彼は絵に描かれた”見えるもの”でなく、生きているという”見えないもの”を表現したのです。幼稚園がとても大事にしている聖句「見えるものにではなく、見えないものに目を注ぎます。」(コリントⅡ418が自然と捉えられていたことを感じ、熱い思いがこみ上げてきました。
 園でも外でも卒園してからも、見えないところに目を注ぐまなざしを持つこの子どもたちを「光の子」というのだと確信しました。                 

                                                                     廣田 雅子

<2023年度1月号より>
 






















 新しい年になりました。一月一日は大人になっても凛とした気持ちが湧いてきます。“今年は…”と「希望」に似た思いが込み上げてきたりもします。そんな矢先に私たちは立て続けに震撼とさせられる大きな出来事に見舞われました。どうなってしまった?なぜ?どうすれば?の動揺に絶句するばかりです。遠くにいる者でさえそうですから、当地の方やゆかりのある方々の心中たるや、察するに余り有るというものです。改めて、子どもたち初め皆様と祈りを合わせていき、できる支援をしていきたいと願うものです。

北陸にあるキリスト教の園では、4日から、来られる先生たちだけで開園したそうです。その日、登園した子は0人でしたが、0人であっても園を開けて待っていることが大切と考えられたのでしょう。子どもたちの心が安まる場として開けておきたいという同労の先生たちの想いが痛いほどわかります。私たちも、ここまでの一連の痛ましい報道に触れている子どもたちの心を思うと、早く園を開けて強張った心をほぐしていきたいと思いますから。

先の日曜礼拝の中で“希望するすべもないところにも尚、希望を抱くことができるのが信仰”と示されました。人間には一縷の望みすら感じられないような状況であっても、神は希望を備えておられるというのです。このメッセージをもう一度胸に抱き「真の希望」を持って新年の一歩を踏み出したいと願います。              

<災害の中にいる友だちのために>

      神さま、テレビで大きな地震が起きたのを知りました。

          おうちが倒れたり、道路がひび割れたり、大変なことがおこっていました。 

          おうちに帰れない人たちがいっぱいいました。 みんなこわいかな。さびしいかな。

          おうちの人と離れ離れになったお友だちはいないかな。

          とても心配で、見ているだけで悲しくなります。

              ・・・ (中略) ・・・        

      どうか、神様、みんなをお守りください。

悲しい気持ちやさびしい気持ち、つらい気持ちを吹き飛ばしてください。   

      みんなに大丈夫だよって、伝えてください。

      わたしも一生懸命お祈りします。              アーメン

【 <保育者の祈り> ―子どもと祈る―より 】

                                                                     廣田 雅子

<2023年度冬休み号より>
 





















 数年前のクリスマス前のこと、ふらっとやって来た「木のおもちゃ屋さん」が、ひとしきりの泥遊びの後で凸凹になっていた園庭を通りながら「良い幼稚園だね~、近頃こういう園庭の幼稚園はなくなっちゃったもんな」と呟かれました。思いがけない誉め言葉に、お髭の生えたそのおもちゃ屋さんが神様の使いのサンタさんの様に思えたことがありました。

 不思議なことにこの時期になると毎年のように、面白いお客様が不意に現れます。今年は「もう孫たちが大きくなったので」と、YMCAの会員の方がたくさんの木のおもちゃを持ってきてくださいました。おもちゃの説明しながら次々と箱から出してくださる様子は、一足早いサンタさんのようで、その方のお髭を触りだす子もいました。古くなってはいるものの、どれもヨーロッパの有名なおもちゃで、幼稚園では少しずつしか買い足せないものなので、子どもたち同様に私も大喜びしていました。

 続いてのお客様は「カメラマン」さんです。なんでも市内の全幼稚園の紹介動画を作るそうで、1時間くらいの動画を撮影した後、1分にまとめるという作業をされていました。普段通り遊び回る子どもたちを撮影しながら「いや~、最高ですよ。これまでに7園を回ったけれど、一番いい!自分の子どもを入れるとしたら間違いなくここです。」と興奮気味に仰っていました。リップサービスなのかもしれませんが、動画を1分にまとめる時には「切れない、切れないな~」と悩んでいた姿が印象的でした。その方が帰られる時には「素敵な幼稚園なのだから、もっともっとアピールした方がいいですよ」と助言くださり 徹底的に遊ぶ幼稚園 ヒノキの香りのする幼稚園 というキャッチフレーズまで残していかれました。

 クリスマスまでのアドベントの時は、ページェントへの取り組みやプレゼント造り、キャンドル作りといった活動もあって結構せわしないのですが、それでいながらなんだかホワッと心の暖まるものに包まれます。お客様のこと以上に、園の中でのほっこりエピソードはそれこそ満載です。保育後の先生たちの会話や日誌にはそんな子どもたちの様子がたくさん伝えられています。

【ずっと休んでいた子が登園してきた時に、ひさしぶり~と言ってその子を抱きしめた男の子】

【練習に行く年長さんを見てページェントで年長さんが頑張れますようにと祈ったにじさん】

【衣装は一切着ない!といったけれど、一つずつ折り合いをつけて遂に全部を着た羊飼いさん】

【トイレからよ~し、今日もページェント頑張るぞ!という勇ましい独り言が聞こえてきた話】

これらこそ、クリスマスの恵みそのもの。恵みをいただいた喜びをもって冬休みへ、そして新年へ向かっていきます。 第2保育期も皆様と思いを共有できましたことを感謝しつつ。

                                                                     廣田 雅子

<2023年度12月号より>
 


















 自由にお遊びをしている時のことです。少々重たい気持ちを引きずりながら事務所の机に向かっておりますと、隣のさくら組から歌が聞こえてきました。♪かみさまはあいしてくださる~♪ 伸びやかに朗々と口ずさんでいます。遊びながらの、いわゆる鼻歌なのですが、聞いている私には神様からのメッセージが届けられているようで、重い気持ちが薄れ力が湧いてきました。また、風の強い日にお子様を自転車の後ろに乗せて登園されたお母様が息をハァハァさせながら「後ろの子どもから♪イエスさまの愛が~♪と聞こえてきて、ペダルを踏む足に力が入りました!」と言われたことも思い出します。きっと皆様のご家庭でも同じようなことがおありだろうと思います。日常の何気ないところで讃美歌が聞こえ神様のメッセージに触れる、なんと恵み深いことでしょう。シオン幼稚園とそこに繋がるご家庭では自然な情景ですが、1年に1度だけ、街の中でも同じことが起きるのは、今、クリスマスまでの期間です。街を歩いていると“あ、これは讃美歌。あっ、これも!”と気付いて嬉しくなります。

でも、今年は手放しで嬉しさに浸れない気持ちもあります。御子イエス様はイスラエルにお生まれになりました。その地がこの世界でオアシスのような楽園であればよいのですがオアシスどころか戦いの代名詞のような場所になっています。まさに今戦火の中にありますが、今に始まったことではなく、途切れることなく紛争の起きている場所なのです。【イエス様の国イスラエル】と知る子どもたちに示しのつかない有様に心苦しさを憶えます。旧約聖書にはイスラエルの人々が、それこそ何度も何度も神様を裏切ってきたことが記されています。悔い改めて神に許しを請いつつも、また罪を犯す…人間の弱さ丸出しの人間の姿です。けれどもそのイスラエルの只中に、イエス様が自らイスラエルの民の一員としてお生まれになりました。めちゃめちゃなイスラエルは、汚く醜く騒々しい<家畜小屋>でありましょう。イエス様はこの<家畜小屋>にお生まれになり光を放ちました。今年はいつにも増して<家畜小屋>にお生まれくださった意味がズシリと胸に刺さります。闇のようなイスラエルに、そしていろいろな争い事の中に、イエス様のお生まれの光が届くことを願ってやみません。

イエス様は私たちの心の闇の中にも生まれてくださり光を与えてくださいます。そのことを心に留めてクリスマスの備えをしていきたいと思います。

                                                                     廣田 雅子

<2023年度11月号より>
 























今年は「たんたのたんてい」のお話を携え、その世界は幼稚園生活のいろいろな場面に表れます。たんたからのお手紙に誘われて、興奮したり夢を膨らませたりしている子どもたちです。運動会では競技の中にたんたもギックもコンキチもいて、お話の情景が浮かんで来るようでした。中でも、ギックの耳と尻尾を付けるとすぐにピョンピョン飛び跳ねてしまう年中さんたちは、可愛らしかったです。続くパレード。こちらは今年から先生と子どもたちだけの取り組みとなりました。またまた仮装をして、歌やダンスを楽しむのですが、その途中でチンパンジーのチーボの友だち「チーニャ」が現れて、みんな釘付けになりました。チーニャと一人ずつご挨拶する時は、年長さんはさすがに慣れている感じでニヤニヤ見つめたり「たんたくんも連れてきて」と話しかけていました。年少さんも、初めこそ先生の背中に隠れている子もいましたが“チーニャはおとなしい”とわかってからは大丈夫、近くでちゃんと握手していました。面白いのはパレードの後のことです。年長さんが真剣な顔で「事件は本当にあったんだね」と言ってきたり、あるクラスでは「みんなでチーボをさがそう」となったり、翌日は「中央公園に黄色い服を着たチーボがいた」「そうそう、僕も見たよ」という話も出てきて、ファンタジーの世界を愉しむやり取りがしばらく続いたのでした。

そのファンタジーの代表格といえばそろそろ出番となる「サンタクロース」の存在です。皆様のご家庭ではどのように受け止めていかれますか? 我が家ではかなり長いことサンタさんが来続けていました。ところが、そんな環境に育ったはずの息子から数年前にこんなメール文が送られてきたのです。『二人の子どもに、実はサンタはいない。パパとママがやっていた” と伝えたから、そこのところ、今年からよろしく』とありました。愕然としました。二人の子どもはまだ6歳と8歳でしたから。震える思いで訳を尋ねると、クリスマスにはいろいろな人からプレゼントを貰って過剰になるからとのことでした。それなら“いろいろな人”を断って“サンタさん”を残すべきだと言いたかったですが、ぐっと飲み込みました。今でも残念に思う出来事です。

ファンタジーや空想には(時として嘘にも)自分の心を解放してくれる魅力が一杯あります。そしてそこには、相手のことを思い巡らす力も存在しているのです。

「あ~お母さんとパレードしたかったな」とのつぶやきが胸に響いています。パレードのご一緒はなくなりましたが、子どもたちが日々持ち帰る「今」をどうぞお楽しみください。そして忘れかけているものを子どもたちによって呼び戻され、大切にされますようにと願っています。

                                                                     廣田 雅子

<2023年度10月号より>
 

















園庭を抜けていく風に涼しさが戻り、ほっとして過ごせる日が多くなってきました。厳しい暑さの夏でしたがそのような中でもお子様とちゃんと向き合って過ごされていたおうちの方々の姿を【はなたば】から知り、胸を熱くしています。穏やかな時ばかりでなく「まったく!」と思う時も含めて、その一喜一憂ぶりに「しっかり向き合う」姿勢を感じました。子どもはしっかり向き合う大人がいるからこそ、安心して伸びやかに育つのだと常々思っています。

今、シオン幼稚園は連続しての園児減少に「幼稚園」という形での在り方そのものが問われています。社会全体が働く人口を増やして税収を確保し、尚且つ少子化を防ぐことへ注力しています。【子どもを生んでくれる働くお母さん】を求めているのです。育てるのは何とかするから、産んでほしいと。でも少子化対策はうまく進んでいません。それは“働くお母さん”は忙しすぎて、子育てが楽しいと思えるような余裕がないからでは、と私は考えています。【子育ての楽しさと喜び】の実感がなければ、どれほど条件を整えようと出生率が継続的に上がってくることは無いでしょう。もちろん出生にはいろいろなご事情があるので、出生率での比較は少々乱暴なのですが、因みに、全国の出生率1.26に対して、シオンは2.23。子育ての喜びを知るご家庭だと確信するところです。

もう1つ、社会の対策に大きく欠落しているのは「子どもの思い」です。子どもはほとんど全ての事が生まれて初めてですから、比較が出来ません。日中お母さんがいない生活も当たり前として受け入れます。寂しいなと思っても何とか消化します。でも本当は一番大好きな人に、見てほしい、聞いてほしい、知ってほしいのです。私的な話になりますが、お熱を出した孫をママに代わって迎えに行った時、自分も具合が悪いのに「あした、ママがおしごと、やすまなきゃいけない」と心配するのを聞いて、胸が締め付けられそうになったことがあります。病気の時くらい自分を出していいのに…と。また、ある講演会で「動物愛護法でも“生後8週までは親元”となっている。人間年齢にすると2歳。動物でもそのように守るのに、人間社会はなんと無頓着なのだろう。」との話があり心底、共感しました。【子育ての喜び】と【子どもの思い】にもっと着目した政策がとられることを切望します。

 さて、それを受けてのシオンの在り方です。変革すべきところは見直しながらも、譲れない所は守り、やっぱり「子どもにとって良いことは何か」を最優先にする歩みを続けたいと願うものです。

                                                                     廣田 雅子

<2023年度 9月号より>
 



















 猛暑続きの夏休みでしたが、子どもたちはお出かけしたことや初めて経験したことなど次々と話してくれています。その背景にはご両親の様々なご苦労がおありだったことと思います。40日の間、工夫して子どもたちに楽しさをプレゼントしてくださりありがとうございました。

 夏期保育の初日、9時にはもうたくさんの子どもたちが門が開くのを今か今かと待っていました。そして帰り際には「また、ながいおやすみになっちゃう?」と聞きに来る子もいて、幼稚園を心待ちにしてくれることが伝わってきました。久しぶりの再会は,賑やかな中にも穏やかな空気が流れていて、友だちや先生との関係性がしっかり築かれていることを感じた一日でした。

 夏期保育の中ではお誕生会もありました。誕生会は1年に1度ですから、1年前の様子との違いがよく分かります。8月の誕生会もそんな光景が見受けられました。昨年はホールに一歩入るのが精一杯だった子、“今年はどうかな?”とは思っていましたが敢えて触れずに入場の列に誘うと、すんなりと友だちと一緒に並び、入場して前まで進んでいくではありませんか。(おっ、1年経つとこうなる?!)と静かな感動を憶えていました。ところが、誕生者の紹介や祝祷が終わりご家族の席に戻った時、彼の心の様子が変わりました。「甘え上手の末っ子の自分」だったことを思い出したようです。インタビューの番になっても前に出てこようとしません。仲良しの友だちから「なにやってんだよ~」の声がかかりますが動きません。無理せずその場でのインタビューとなりました。終わりまでこの形になるのかな…いつもの彼の様子を知っているだけに少々残念な気持ちでいた時、担任の先生が彼に歩み寄り、一言二言、言葉をかけました。すると、ゆっくりとではありますがご家族の席を離れ、再び前に出てきてみんなからのHappyBirthday♪の歌に包まれたのでした。先生がどんな言葉かけをしたのかはわかりませんでしたが、それによって彼の中の「幼稚園の自分」が呼び起こされたのだと思います。

 人は、仕事の中、家族の中、友人の中…と状況に応じたいろいろな自分を持っています。幼い人たちは初めはそのように分化してはいませんが、年齢を重ね過ごす社会を広げていくうちに、その場に相応しい自分を持つようになっていきます。それが「社会性の芽生え」です。先程の彼も先生の言葉がきっかけで、身につけてきた社会性が呼び戻されました。誕生会が終わってほっとしたように友だちの中に入っていく姿を見て、本当に1つ大きくなったなと思いましたし、担任の声に応えようとする姿に、先生との絆を感じました。社会性も絆も、毎日の泣き笑いの生活を共にすることでこそ培われていきます。これから始まる第2保育期が、心の力を生み出す日々でありたいと願い歩みだしていきます。  
                                                       廣田 雅子

<2023年度 夏休み号より>
 

























出会いの第1保育期が終わりました。ドキドキした気持ちから始まり、子どもたちはたくさんの心を動かし、それに呼応するようにおうちの方も心を寄せ、思いを共有してくださり、本当に恵み豊かな日々であったことを心から感謝いたします。

その中でも印象深いのは、生き物に触れることが例年になく多かったことです。飼育や捕獲のためにたくさんあった幼稚園の虫かごは、先日ついに1つもなくなりました。青虫たちの見事な食べっぷりに毎日葉っぱを取って来て、さなぎに変身したらそ~っとして、蝶になって空に戻す時は「元気でね~」と手を振る…もう何匹を見送ったことでしょう。カブトムシの幼虫もたくさんいただいて、どのクラスも毎日飼育カゴとにらめっこ。ある朝、全く姿の違う蛹になった時は「あ~!」と感嘆の声が上がりました。無事に成虫になってからはお世話に余念がありません。積み木迷路で遊ばせたり、スプーンでゼリーを食べさせたり…。初めは遠くから見ていた子も、いつの間にか掴めるようになっていました。

もちろんカナヘビたちも大人気で子どもたちの仲間入りです。生きた餌を獲るために大忙し。特にYくんの熱心さはみんなの知るところで、毎日カナヘビと登園です。ところがそんな日々に思いがけないアクシデントが起きました。走ってきた子の足が、蓋の開いていた飼育箱にたまたまスポッと入ってしまい、一匹が命を落としたのです。降園時の一瞬の出来事でした。号泣するYくんとそこに集まる何人もの子どもたち。みんな、彼が大事にしていたことを知っているからこそ、事の重みがわかります。涙が止まらないYくんにお母さんがしっかりと寄り添いお友だちと一緒に土に埋めてお祈りしました。一方、この場から少し離れた所で、神妙な顔をして小さくなっているくんがいました。踏んでしまったからです。“ごめんね”がすぐには届かないのを感じています。やっと口にできたのは「僕のカブトムシあげるから・・・」でした。もちろん代用は出来ないのですが、幼いながらに「命の代わりは命しかない」と感じたのでしょう。精一杯の償いと慰めの言葉だったと思います。それから数日後、いつもは早く登園するくん親子が時間ぎりぎりにやって来ました。見ると、お母様の荷物の中にカナヘビがいます。「姿を見たので、これは捕まえなくちゃと…必死で・・・時間かかっちゃいました・・・」と。Yくんに渡すためです。汗を拭きながら、そう話されるお母様の目は潤んでいました。

子どもたちの経験に寄り添う大人の心の持ち様で、経験の重みが変わっていきます。命を前に「かけがえのないもの」として大人も向き合うと、「命の尊厳」という、とてつもなく大切なことの根が張っていくのだと思いました。夏休みにはたくさんの生き物に触れることがあるでしょう。お盆にご先祖様を想う機会もあることでしょう。終戦・原爆を振り返る時もあります。大人が大切にしているところに、子どもたちの心も動くことを憶えて、それぞれの夏を豊かに過ごされますよう、そして神様の祝福が臨みますようお祈りいたします。    

<2023年度 7月号より>
 




















 季節の移り変わりの通りに雨降りの多い6月を過ごしました。そんな日は限られた場所での遊びとなりますが、必然的に友だちとの距離がぐっと近くなり、刺激や影響を受け合い、交じり合いの多い生活となって、それはそれで良いものです。更なる新しい友だちとの出会いも次々と生まれていました。雨は潤いと恵みをもたらしてくれ、この時期に歌う讃美歌♪ぱらぱら落ちる♪は本当に子どもたちの生活にぴったりだなぁと毎年のように感じています。

 6月には園生活を広げるたくさんのことが行われました。まずは1日に行われた親子遠足。前日まで降り続く雨にどのクラスも“てるてる坊主”が一杯に飾られていました。てるてる坊主を作りつつも、祈りの先は神様にしっかりと照準を合わせていて、幼いながらも「遊び心」と「信仰」を使い分けているのはさすが教会幼稚園の子どもたちです。その心に応えるかのようにぴたりと止んだ雨。穏やかな天気の中、4年ぶりとなる親子遠足に出かけました。バスの中では、お礼拝を初め手遊びや歌をおうちの方に聞いていただき、着いた先の公園では、お友だち・先生・お母様・お父様…と大好きな人に囲まれて、どの子も嬉しそうでした。ことのほか印象的だったのは、保護者の方々の柔らかな空気です。子どもたちを見守る暖かなまなざしはもちろんですが、お母様同士の会話も和やかで、日常の園生活で顔を合わせ見知っている間柄だからこそのものでしょう。少し離れた所にいた私には、シオン幼稚園の集団全体が『愛』に包まれているように映り、つくづく、この中で育ちゆく子は幸せだと感じていました。

 本格的な活動が始まったリトルシオンでは、初めての集団や活動に、幼い人たちの心持ちはいろいろです。気持ちが乗って目を輝かせて臨む時もあれば、反対に全く乗らずにお母様の背中に隠れたり、中にはホールの外に出ていく子もいます。でも嬉しいのは、我が子の反応がどのようであってもお母様たちご自身がリトルの時間を楽しんでくださっていることです。先日、しばらくぶりにリトルの場に入ったのですが、何とも言えないふわぁ~とした暖かさがあり、それは遠足の日に感じた空気と同じでした。また、「ひよこプレイデイ」では初参加の2歳のAくんが、聞こえてきたピアノの音に「なんのおと??」と立ち上がることがありました。“児童ホームや保育園ではピアノの音は聞かないですから”とお母様たちが話されていましたが、シオンでは当たり前のようになっていることの中に、特別な魅力が潜んでいるのかもしれません。ピアノの音、トーンチャイムの音色、マナのクッキーの香り、ガルチンの実り…五感を通して「ほっとするシオンの空気感」を7月も奏でていきたいものです。       

                                                                     廣田 雅子

<2023年度 6月号より>
 

















 園庭の栗の木が花を付け、幼稚園は今、独特な匂いに包まれています。陽ざしが急に強くなる日もありますが、そんな日はこの栗の木が優しく影を落としてくれます。先生に見守られるだけでなく自然にも守られて、子どもたちは生き生きと遊びを広げ出しました。

 ある日、ホールで数名の子どもたちがそれぞれのイメージを合わせながらおうちごっこ”を始めました。そこに男の子が「入りたい」とやってきました。が、どうやら午前のお遊びの時に邪魔をしてしまったようで不評を買って入れてもらえません。押し問答の末「変なことは絶対しない」という彼に「じゃあ猫だったら入れてあげる」という許可が下りて、にっこり。すぐにニャーニャー言ってお家の中に入っていきました。そこから片付けまでの20分間、彼は可愛いペットとなって無事に仲間入りを果たしていました。入れる側も、入れてもらう側もそれぞれが許容範囲を広げながら折り合いをつけて遊びを成立させていく姿がそこにありました。 更にこのお家ごっこにはお母さんが不在で、お姉さんばかりが住んでいて、設定のやり取りを耳にしていた先生によると、1番目と2番目のお姉さんはいるものの、なぜか34番はいなく、5番目のお姉さんから再登場とのこと。子どもたちのイメージの不思議さと面白さを感じてインフォメーションでも共有させていただきました。

 後日、その遊びに加わっていた子のお母様から更なる真相(?)を伺いました。おうちにおかあさんがいないのは〔戦争で死んでしまったから〕で、お母様が思わずそれは悲しいわね、と言うと「ううん、悲しくないよ!だって、天国の神様の所にいるんだよ。3食付いているんだよ。」と明るく話したとのことです。その我が子を見て、神様が安心できる存在としてしっかり捉えられていることに驚いたとお話しくださいました。私は私で、嬉しそうにお伝えになるお母様と向き合いながら、価値を共有していける喜びを胸一杯に感じていました。

ある1日の1つの“おうちごっこ”ですがその中に実にたくさんの心や思いが込められていることがわかり、「遊び」を通してどれほど大切な経験しているのかを確認しました。6月も子どもたちがたくさんの遊びを繰り広げていける幼稚園でありたいと思います。

                                                                     廣田 雅子


<2023年度 5月号より>
 




















 新年度が始まって園のお庭が一気に賑わいました。色とりどりの花はさっそく「はなたばにしてください」とお母様へのプレゼントになります。束にはできないような短い茎に苦心しながら先生が可愛いブーケにしています。自分のリクエストに応えてもらえる心地よさは信頼感の始まりです。「虫あみとカゴをかしてくださ~い」の元気な声も途絶えることがありません。春休みの間のんびりしていたカナヘビたちも大慌て。パッと捕まえて得意そうに見せる年長さんは、去年まではつかめずにいた子です。見つけてもやっぱりちょっと怖くて、先生に捕ってもらっていたのです。自分で捕まえられるようになりました。【その時】を待っていてもらえるのは自信につながります。シオンの庭の豊かな自然に囲まれて、子どもたちは心も体も伸び伸びと育ちゆくことを感じます。嬉しいことにこの中に新しいお友だちがたくさん加わりました。16名の新入園、そして5名の転入園、合わせて21名の子どもたちです。ここはどんなところかな?お友だちは遊んでくれるかな? たくさんの「?」に包まれてドキドキしています。そんな心を一気に和らげるような温かい仕草が見られます。貸してあげたり、譲ってあげたり、話しかけたり…。「二人ともお姉ちゃんがいるね」などとお互いの共通点を探ろうとしている姿もありました。新入園の子たちにはお世話の手が次々届きます。「自分でやりたい」と「世話をしたい」の気持ちがぶつかっている光景もあれば、ただ座っているだけで帽子が被せられ、コップが手渡され、いつの間にか上履きも脱がされているといった王様のような姿もあります。(やってもらうというより、やらせてあげているという表現の方が近い状況ですが。)そうやって日々を共にしながらたくさんの友だちと出会います。今、毎日先生たちの話題に上がるのは、進級児も含めた“新しい出会い”の報告で、美しさを感じるような出来事です。子どもたちだけではありません。1年前は園庭に一人でおられたお母様が、いつの間にか他の方々とのお話で盛り上がっていたり、送迎だけで帰られていた方が、サークル活動を始められたりと、お母様たちも輪を広げている様子をお見掛けするとホッとするような嬉しさがこみ上げます。子育ては一人で背負うより、人と分かち合う方が、喜びは膨らみ悩みは軽くなるからです。子育ての時期に幼稚園という場を選び、フルに働くことは先延ばしにして我が子との時を満喫する、そんな生き方を選択したお母様たちですからその時点で【同志】です。子どものもたらす世界に身を置いて、自然の恵みに気付き、季節を感じながら生きる・・・その生き方は必ずやお母様の人生に潤いを与え、豊かにしてくれることでしょう。5月、子どもたちのもたらす風の中にゆったりと浸ろうではありませんか。

                                                           廣田 雅子

<2023年度 4月号より>
 


















 春の風にのってひらひらと舞い落ちる花びら。みるみるうちに幼稚園のお庭が桜色に染まります。いつもはこの“花の絨毯”の上で はしゃぐ子どもたちの姿がありますが、今年は桜が早すぎてその光景は次の春に持ち越しです。けれども早かったおかげで卒園式には少しだけ花が咲いていて、コロナのために桜の季節には入園できなかった年長さんたちへの神様からのプレゼントのようでした。

 この春からコロナへの対応が変わりました。
 卒園式の3日前の313日、社会で「マスク着用は任意」となり、教育界でも卒園式の園児と教員のマスク着用は求めないとの知らせがありました。その日を境にマスクを取られた方もおられることでしょう。

 Aちゃんのご家庭もそのようでした。これまでずっと着けていたマスクを外しての登園です。それまでもお弁当の時は外していましたから、Aちゃんのお顔はもちろん知っていましたが、遊びの時の表情は「目」でしかわかりませんでした。マスクを外したその日、遊びの中での彼女の表情にびっくり!!物静かなAちゃんですが、こんなにも嬉しそうにお友だちの遊びを眺めていたのか!と。「目」だけでは掴み切れませんでした。子どもたちも敏感に気づきます。「Aちゃん、かわいい」の声に続き「(遊びに)はいる?」のお誘いがかかります。次の日には同じクラスの子と手を繋いで歩いていたので「あら、前から仲良しだったかしら?」と尋ねると、「今日からだよ」のお返事。お友だちからのその言葉に、にこにこと笑顔一杯のAちゃんでした。

人とのつながりを築いていく時期に悩ましい壁であった”コロナ対応”が大きく変わります。言葉をかけ、話を聴き、まなざしを注ぎ、表情を見せ、触れ合う・・・五感すべてを使って子どもたちやおうちの方々と関わり合っていきたいと思います。

 今年の保育主題は『共につむぎだす』です。「つむぐ」とは縦糸と横糸が織り合わさっていくこと。いろいろな色の糸がお互いの色を大事にしながら紡いでできる布はどんなにか素敵なものになることでしょう。神様と私たちを繋ぐ糸を縦糸にして、さあ、新しい年の幼稚園の日々を共につむぎだしてまいりましょう。    

                                                              廣田雅子
<2022年度 春休み号より>
 






















お別れ遠足を前に天気予報の傘マークとにらめっこ。そんな1週間を過ごした後、待っていてくれたのは柔らかい春の陽ざしでした。一人のお休みもない全員参加を子どもたち自身もとっても喜んでいて“楽しみは分かち合うともっと楽しくなる”を知っている子どもたちです。いよいよ動物公園が近づいてくると目に飛び込んできたのはピンク色の花。バスの中では「さくらだ!」「まだ、さかないよ」のやり取りが聞こえてきます。「これは早く咲く種類で“カワヅザクラ”幼稚園のは“ソメイヨシノ”」と伝えると、またまた「知ってるよ~」の声が上がり、つくづく豊かに育っているなぁと実感します。到着するとまず、フクロテナガザルの動きに釘付けで拍手したり真似したり…。続く科学館ではめったにお目にかかれないナマケモノを発見して大興奮し、次の寝そべるゴリラには、みんなで「ローラ~!」(名前です)と呼びかけたりしながら、友だちと手を繋ぎ、笑い合い、教え合い、思いを分かち合いながら歩いていく姿は幼稚園生活のすべてを表わしているようでした。

この日は12団体が来ているとあって、いろいろな園とすれ違ったのですが、驚いたのは何クラスもある大きな幼稚園の様子です。先頭の先生が「チーターで~す」と後ろまで届く声で伝えると、子どもたちはそれに従って歩きながら檻の中をチラッと見ます。しばらくして「ハイエナで~す」の声にチラッと見て、またまっすぐ歩きます。子どもたちの関心は動物ではなく“前の子との間隔”にあるかのようでした。さっきまで、ロバの背中に十字の印しがあるのを確認して「ほんとだ!」「あったあった!」と大喜びで報告しに来たシオンの子どもたちの姿とは対照的で、同じ「卒園遠足」という行事であっても、実態は大きく違うと感じました。残念なことにそのことは保護者には伝わりませんし、それどころか、もしかすると整然と歩く立派な姿を望む人の方が多いのかもしれません。でもやっぱり私は、動物に触れ友だちや先生と共感しあうことが、子どもの健全な育ちだと考えるのです。

先日、年長懇話会の中で「卒園式が間近だけれど『賞状のもらい方』などのいわゆる“所作”を練習するようなことはしていない。当日困らない程度の練習ににとどめ、それより少しでも多く友だちと関わる時間を取りたい」と話すとお母様たちが皆大きく頷いてくださいました。その時、再確認したのです。このようなご理解があるからこそ、幼稚園は臆せずに「子どもにとって良いと思うこと」を進めていけるのだと。運動会もコンサートもページェントも「子どもの自然な姿」を最も大切にして取り組んできました。ですから時にはその姿ゆえにハラハラしたこともおありだったでしょう。これで本当に大丈夫?と思われたこともあったでしょう。そこを堪えて信じてお子様をお預け続けてくださったことを心より感謝いたします。年主題としてきた【つながって】がここにあることを感じ、その繋がりの中心に神様がいてくださったことを感謝し、2022年度を閉じていきます。   

廣田雅子

                                                                                                                                                                                                                                          

                                                                                                                                                                                            

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